9月17日、京都では珍しく、避難を呼びかける電話が鳴り続けた緊張の一夜が明けると、沓掛のみつばち保育園西山園舎から、園長の悲壮な声で一報。
あちこちの土砂崩れや河川の決壊箇所の情報も入らぬ混乱の中、迂回を繰り返して法人の理事長を乗せ、現場に辿り着くと、みつばち保育園の大看板クワの木が二股の根元からパックリと割れて倒れている。
(「この素敵な足のために」参照)
たいせつな運動会を5日後に控え、いつものことだけど、対応は緊急を要した。
≪ これまでの30年、これからの30年 ≫
捨身のリーダーが中心となって築いてきた30年。法人化のあと、これから若い世代にどうバトンを渡してゆくのか、次の30年をどう描いてゆくのか… それは、つまるところ若い人たちが自分たちで考え、作りだしてゆくしかない。
この西山園舎は近年、努力を重ね敷地を広げたが、途中で放置されそのまま荒れた部分もあったり、手軽で便利なキャンプ場のような使われ方をされたりで、子どもたちの大切な場所にしてはまるで遺産を食いつぶしているような妙な状況になってきている。世代の節目の時期にさしかかって、保育園では議論を起こそうとしていた。
保育園の人気の樹木は、連日の踏圧で固められ根呼吸もしんどく、非常に過酷な状況を覚悟しなければならない。山や庭とも全く条件が違うし、寿命にも影響が大きい。
苗木を植え30年。この木は子どもたちに愛され、12mの高さにまで育った。登りやすいように剪定や施肥を繰り返してはいるのだが、一方で太い枯れ枝も目立ち始め、ちょっとくたびれた体に鞭打ちながらも、子どもたちを両手に抱えたり、木陰で守ったりと、一緒に遊びながら嬉しそうに立っていた。
起こして、残った根の量にふさわしく、ぐっと小ぶりに整姿剪定し、たくさんの頑丈な支柱で支え、土壌改良して、養生のため柵で囲い立ち入り禁止にする… 樹木治療としては基本だが、いつも子どもたちに囲まれて共に育ってきたこの木がそういった対応を望んでいるだろうか? あるいは、そんな形になってまで遺産にしがみつくのは、常に前を向いてきた「みつばち」らしくないと……
これまでの30年をシンボライズする木が倒れたのは、次の30年を具体的に考えてもらういい機会ではないか。残念だが思いを切って、伐るべし。
根も全て掘り取り、更地にして、次の30年に向かって新たな風景を若い人たちに、今度こそ本気で描いてもらおう。
ここで本園の運動会があるので3日以内に作業を。
園長、理事長、私の話し合いは、こういう結論になった。
しかし結局、私には伐ることはできなかった。
園長、理事長の覚悟ともいえる決断を裏切ってしまったが
倒れても、傷ついても、かっこ悪くても、人間の子どもたちと生きてゆく…
それが大クワの意志ではないかと思えてきた。
パックリと裂けて倒れた太幹はかえって動かさない方が、かろうじてつながっている根を傷めない。芝生山に向かって倒れているので、それなりに安定しているから、最低限の剪定と傷ついた根元を改良土で保護すれば、このままなんとか生きてゆけるかもしれない。
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